カンボジアのまさと(masato_ogiwara)です。
先日僕はカンボジアに住む友人たちと一緒にカンボジア最大の刑務所であるプレイソー刑務所に行ってきました。
この記事を公開した後には、多くの方から個別でメッセージをいただいたり、フェイスブックでコメントをいただきました。
中にはポジティブなものもあれば、ネガティブな意見もありましたが、まずは僕たちのできる範囲でチャレンジしてみようということで、同志たちと一緒にこのプロジェクトに関するチームを結成しました。
そしてカンボジアの犯罪事情についていろいろ調べたり、世界の事例を調べていく中で、これまで知らなかった事実を知ることができました。
今回は調べたことでわかった、現在のカンボジアの犯罪事情についてと、世界や日本の刑務所内で行われている職業訓練の事例を紹介します。
カンボジアの犯罪事情
現在のカンボジアの犯罪事情は以下の通りです。
★ 犯罪発生状況
カンボジア内務省の犯罪統計資料によると, 2014年の犯罪総件数は2,814件で前年の同時期(2,709件)と比較して微増(+4%)と発表されていますが,強盗や窃盗等の対物犯罪1,379件が全体の約49%を占めています。前年と比べて特に,窃盗の発生件数が15%増加しています。(引用元:外務省海外安全ページ)
そこで、現在カンボジアではどのような犯罪が何件ほど起こっているのか?を一目でわかるように、在カンボジア日本国大使館で公開されている安全情報をもとに、2009年から2015年までの犯罪データの推移を集めてまとめました。
(出典元:カンボジア安全情報をもとに作成)
このデータを見る限り、過去7年間では圧倒的に窃盗と過失(傷害)・喧嘩が多いことがわかります。なので、今後はここからさらに再犯率などのデータを調べていきたいと思います。
いま僕たちが調べていること
いま僕たちは、日本国大使館のデータをもとにカンボジアの犯罪事情の詳細を調査しています。
現在、以下のことをインターネットや、各関係団体や機関に問い合わせを行い調査中です。
- カンボジア内の刑務所の数、種類、それぞれの規模
- どんな人が収容されているのか?(男女比、年齢、国籍、 犯罪の種類)
- 再犯率(犯罪の属性別)
- 再犯防止の現状(刑務所内でどんな対策が行われているのか)
- 刑務所に関する団体(NGOやNPO)
- 運営のために年間でどれくらいの費用がかかっているのか?(内訳含む)
もし上記のことで何か情報を知っておられる方がいらっしゃいましたら、ご連絡をいただけますと幸いです。
刑務所に関連する団体
ここではブログを見てくださった方たちから、ご紹介いただいて知ることのできた刑務所に関連する団体をまとめておきます。
すでにいくつかアプローチも始めており、日程の調整中の団体があります。情報のご提供をいただいた皆様ありがとうございました!
世界の事例から学ぶ
ブログを公開してから、職業訓練に関することで以下のような意見をいただきました。
- 日本語教育は今後日本人が被害に遭う可能性があるため行うべきではない
- 言語教育よりも適したものがあるはず
- 文化活動がカギになる
以前の記事では日本語教室を行いたいということを書いていましたが、現在では日本語教育にこだわることは一旦やめました。
その理由は、僕たちの目的はあくまで「若者の再犯率を下げること」であるため、そのための方法や手段は日本語教育である必要がなく、他にもっと適したものがあるかもしれないと考えたからです。
最終的に日本語教育が適しているとなれば、日本語教室を行うかもしれませんが、
- 絶対にやるべきこと
- カンボジア側が求めること
- 僕たちにできること
の3つの軸で考えた上で決めます。
そこで、実際に世界の刑務所内ではどのようなことが行われているのか?ということを調べてみると、そこには数々の事例があることが分かりました。
なにがカンボジアにとって適しているのかは、現段階ではまだよく分かりませんが、今後参考になりそうなフィリピンの刑務所内で行われている職業訓練の事例を紹介します。
フィリピンでの事例
これはフィリピンの一例でマイケルジャクソンの歌に合わせてダンスをするというものです。
YOUTUBEで色々探してみるとわかりますが、曲の種類は豊富にあります。
ダンスで協調性を高め、社会復帰を促すためにやっているとのことで、多くの受刑者の性格が穏やかになるなどの効果が出ているようです。
セブのある刑務所では毎月1度入場料無料で一般公開をしている刑務所まであるようでした。
日本での事例
日本では、刑事施設に収容される受刑者のうちのなんと約60%が再犯者です。
さらに居場所と仕事がないと再犯しやすいという統計があり、出所後に仕事に就けるのか?と適した住まいがあるのか?ということが再犯に大きく関係しているようです。
そこで現在日本で行われている再犯防止のための具体的な施策は以下のとおりです。(参照元:政府広報オンライン)
- 対象者の特性に応じた指導・支援の強化
- 社会における「居場所」と「出番」の創出
- 再犯の実態等に関する調査・分析、効果的な対策の検討・実施
- 広く国民に理解され、支えられた社会復帰の実現
再犯を防ぐために日本の刑務所内で行われていること
現在の日本では、刑事施設(刑務所・少年刑務所・拘置所)と少年院では行われる取り組みに微妙な違いがあります。
ここでは、それぞれの違いを簡単に説明します。
刑事施設(刑務所・少年刑務所・拘置所)
刑事施設(刑務所・少年刑務所・拘置所)では、主に出所後の社会生活に適応できるように矯正処遇が行われます。
この矯正処遇では、大きく分けて3つの柱で指導が行われます。
- 作業
- 改善指導
- 教科指導
それぞれの詳細はこんな感じ。
①作業
(引用元:政府広報オンライン)
②改善指導
(引用元:政府広報オンライン)
③教科指導
教科指導では、社会生活に必要最低限な学力が不足している場合には、小、中学校の内容「補習教科指導」や高校または大学レベル「特別教科指導」を行います。(参照元:政府広報オンライン)
少年院
少年院では、再非行を防ぐために大きく分けて5つの柱で矯正教育を行います。
- 生活指導
- 教科指導
- 職業指導
- 体育指導
- 特別活動指導
それぞれの詳細はこんな感じ。
①生活指導
(引用元:政府広報オンライン)
②教科指導
教科指導では、基礎学力の向上を目的として行われ、義務教育を修了していない人は、中学レベルの勉強を行い、高校レベルが必要な人には通信制課程を受けさせます。
ケースによっては、大検を受験する場合なんかもあるようです。(参照元:政府広報オンライン)
③職業指導
(引用元:政府広報オンライン)
④体育指導
体育指導では、基礎体力の向上を目的として行われ、さまざまなスポーツを通じて健康で安全な生活を送るために必要な能力を養います。(参照元:政府広報オンライン)
⑤特別活動指導
(引用元:政府広報オンライン)
日本の事例から何を参考にするか?
日本の事例を調べてみて、日本とカンボジアではそもそもの教育のベースがまったく違うため、同じことをすればいいわけではないかもしれませんが、かなり参考になる部分はあると思いました。
特に少年院で行われている「特別活動指導」は、学力や年齢にかかわらずできることもあり、カンボジアにも適しているのではないかなと感じました。
ソーシャルインパクトボンドという仕組み
世界の再犯防止のための事例などを調べているうちに、今回のプロジェクトに適した仕組みを見つけました。
それがソーシャルインパクトボンドです。(仕組みの説明については以下の動画を参考)
★ソーシャルインパクトボンドとは
行政が抱えている課題を民間と連携して解決していくもの
今後僕たちの活動がどのように始まり広がっていくかはわかりませんが、いつかはこのソーシャルインパクトボンドの仕組みを使って、この問題を解決できるように進めていきたいです。
僕たちにできることをやるのみ
いま僕たちはこの取り組みを通して、どのような結果を生む活動にするのか?という活動のゴールを検討しています。
この目標設定は、カンボジアの犯罪事情についてもう少し情報が集まったら、どの数字をどれだけの期間でどれだけ下げるのかなどという具体的なものにする予定です。
「カンボジアの犯罪は無くす」などという大きな問題に対して僕たちができることはないので、この活動では背伸びをせずに、僕たちのできることをできる形で実現していきたいと思っています。
時間がかかることではありますが、カンボジアで腰を据えてチャレンジすると決めた同志が集まってスタートしたプロジェクトなので、長い目で温かく見守っていただけると嬉しいです!
また、本件に関して何か知っていることなどがあれば、些細なことでも結構ですので、情報提供をしていただけますと幸いです。