カンボジアの刑務所の中で見た光と闇。彼らが生きるために選んだ職業は「泥棒」− 。

カンボジアのまさと(masato_ogiwara)です。

カンボジア最大と言われる刑務所である「プレイソー刑務所(Prey Sar Prison )」へ行ってきました。

今回カンボジアの刑務所へ行った目的は、中にいる日本人受刑者の矢沢光剣さん(仮名)とお会いするため。(フェイスブックはこちら:矢沢光剣さん)

 

本件についてブログで記事にするかを悩みましたが、

カンボジアの刑務所についての最新情報は現在ネットでは公開されておらず(西村さんの記事が2014年のもので多少の変化あり)、一つの情報として共有できればと思い、記事にまとめました。(矢沢さんの面会は今回が最後とのことでした

 

本記事の内容は、お話を聞かせてくださった矢沢さんの個人の話についてではなく、カンボジアの現在の刑務所事情を中心に紹介します。

矢沢さんについては、以下のブログで矢沢さん本人が綴っておられますので、そちらを参考にしてください。

刑務所に行く前に準備するもの

実は、今回刑務所にお伺いするのは2回目で、1回目は色々と準備不足で面会をすることができませんでした。

そのため、面会をスムーズに行うためにこちら側で準備しておくべきことを紹介します。

 

事前に用意しておく物と収集しておく情報は以下の通りです。

 

  • パスポート原本とパスポートコピー1部
  • 面会は基本的には二人まで
  • 面会予定の方の情報を事前に入手しておく(本名、入所年月日、部屋番号、建物名、罪名)
  • 面会者が話を通してくれている警察官の名前と役職→特に重要
  • クメール語のできる人材(クメール語の書類の記入あり)

 

以上が事前に用意しておくべきものと情報です。

刑務所内の敷地は携帯の電波が入らないため、連絡を取るためには出口まで出て建物から離れる必要があります。

そのため、事前に情報を入手しておくことでスムーズに面会をすることが可能。(SmartのSimのみ若干の電波を拾えることはあるみたい)

 

★POINT★

刑務所の中には市場があるようですが、品揃えが良くないこともあり、手に入らないものも多いようです。そのため、もし面会を希望される場合は手土産(何が持ち込めるかは要確認)を持って行くようにしましょう。

しかし、中に持ち込めないものも多いので、お菓子などで小分けされているものは全て透明のジップロックに移してから持って行くようにしてください。

 

カンボジアの刑務所とは?

 

このプレイソー刑務所の収容人数のキャパは1,500人ですが、現在はなんと5,800人の方が収容されており、完全に人数オーバーの状態。

その理由は、カンボジアは執行猶予が日本のように刑務所に拘置される前につくのではなく、出所後の後ろにつくため、裁判で判決が出る前に拘置されてしまうからのようです。

 

この刑務所内はカンボジア人だけではなく、多くの外国人もいるらしく、捕まる理由は主に以下の通りです。

欧米系:児童売春
アジア系:覚せい剤、人身売買
カンボジア人:覚せい剤、泥棒

 

現在、日本人で収容されている人は2名のみで、すでに刑期を終えて、日本へ送還された方々も何名かいるようです。

 

★POINT★

刑務所の面会時間は午前が8時から10時30分まで、午後が14時から16時まで(多少の延長はチップでなんとかなるらしい)

 

 

カンボジアに「プレイソー刑務所」の場所は?

 

カンボジア最大規模プレイソー刑務所は、プノンペン市内からタクシーで約40分ほどで行くことができます。(時間帯によっては1時間くらい)

方角的には、キリングフィールドの方向へ向かって、途中の道を西へ曲がると行くことができます。現在では、道が綺麗になっているのでバイクで行くこともできそうです。

詳しい場所はこちら。

 

 

 

今回はカンボジアのタクシー配車アプリを利用して、日本人数名で乗り合わせて向かいましました。カムリで片道約$15くらい。

タクシーアプリの紹介はこちら:カンボジア旅行の際にはタクシー配車アプリをダウンロードしておこう!

 

★POINT★

タクシー代は車の車種によるが、片道$15-$20くらい。

 

 

刑務所に到着

 

カンボジアの刑務所へ

masato ogiwaraさん(@masato_ogiwara)がシェアした投稿 –

 

この動画は、刑務所の最初の門をくぐって中に入るまでの様子です。

僕たちが刑務所に到着したのは朝の8時。

土曜日ということもあって、多くの家族連れがおり、まるで休日の公園のような雰囲気で、本当にここが刑務所なのかと疑ってしまうほど、和やかな場所でした。

 

(刑務所の外側の様子。奥の青色の看板の向こうに面会場所や収監場所がある)

 

最初に僕たちが通された場所は、刑務所の敷地内とはいえ、外側であるため、ここでの手続きをクリアしなければ、面会場所(刑務所の敷地内)に入ることはできません。

そこでまず着いたら、入って右奥にある建物で一枚1000リエルの用紙を購入し、面会者の情報を記入します。(ここで事前に聞いておくべき内容の「本名、入所年月日、部屋番号、建物名、罪名」の記入が必要になる

 

そしたら入り口手前の建物で書類の内容確認と、サインやパスポートコピーを提出して、それが受理されれば、いよいよ面会のために中に入ることができます。

 

★POINT★

担当者によっては、たらい回しにされることもあるため、時間に余裕を持って行くことをお勧めします。僕たちは朝8時に到着して、全ての手続きが完了したのが9時30分過ぎでした。

 

面会直前には厳しいボディチェック

 

いよいよ面会となり、看守に名前を呼ばれます。今回は僕らが唯一の日本人だったこともあり、「アジノモト、AJINOMOTO」と呼ばれました。(これより先は撮影NGなので画像はありません。)

そして、建物へ通されると、面会直前に中で厳しい荷物&お土産チェックが行われます。

特にお土産はとても厳しくチェックされ、新品でもすべて開けて中身をチェックされます。

 

この時持っているカバンや財布、携帯などは全て預けなくてはいけません。(貴重品が心配な人は財布から現金のみを持って中に行くことは可能)

すべてのボディチェックと荷物チェックが完了すると、刑務所の面会スペースに入ることができます。

 

★POINT★

面会スペースには靴で入ることができない(靴底に覚せい剤などを隠している場合がある)ため、刑務所の用意したサンダルに履き替える必要があります。

このサンダルがあまり綺麗でないので、潔癖な人や誰が使ったかわからないサンダルを履きたくない人は、サンダルで行くことをお勧めします。

 

★POINT★

手土産はチェックが終わると番号札を渡されるので、それを面会者に渡すことで、後で引き換えることができるようです。

 

 

いざ、面会へ

 

僕がイメージしていた面会スペースは、ガラス越しの向こうに面会者がいて、ガラスの穴の開いた部分から声を通して会話をするものだと思っていました。

しかし、実際にはイメージとはまったく違うもので、整備された庭やテーブルや長イスが置いてある、まるで公園のような場所でした。

 

通常の面会スペースはとても狭く、小さなベンチや部屋で多くの面会の人たちがいましたが、今回はVIP席と言われる独立しているところで、対面で顔を合わせながらゆっくりお話することができました。

 

今回話してわかったことを箇条書きでまとめます。

 

  • 中での生活費は$300-400程度かかる(主に食費やチップ)
  • 中のマーケットの価格は通常の1.5倍から3倍する
  • 中のマーケットで売っているものは差し入れできない
  • ウェブでのアルバイトをして生活費を稼ぐ
  • 家族や一般の方からの支援を受ける場合もある
  • お金のないカンボジア人はマッサージなどをして生活費を稼ぐ
  • スポーツグランドがありスポーツができる(バレー、卓球など)
  • 200人のキャパの大部屋に450人で寝かさせられていた経験あり
  • 日々受刑者の外国人が英語を教えていたり、カンボジア人が外国人にクメール語を教えたりしている
  • 面会場所から生活スペースまでは厳重な二重チェックを受けて戻る
  • 冤罪で捕まっている人も多い(一度入ってしまったら出るまでに時間がかかる)
  • 何度も犯罪を繰り返し戻ってくるカンボジア人が多い

 

 

職業が泥棒になってしまっている

 

今回お話を聞いていて一番印象に残ったのは、カンボジア人の若い人たちで刑務所に入ってしまった人たちは、同じ罪を繰り返し、何度も何度も刑務所に戻ってくるということです。

これに対して、矢沢さんは

矢沢さん

矢沢さん
彼らの職業が「泥棒」になってしまっている。結局教育を受けていないから、釈放されても働き口はなく、同じことを繰り返してしまわざるを得ない。

彼らが本当に更生するためには、刑務所内での職業訓練が必要。

 

ということをおっしゃっていました。

 

僕はこの言葉を聞いた時に、

  • なぜ国として刑務所内で職業訓練を行わないのか?
  • もし彼らが何かスキルがあって仕事をすることができたら、きっと同じ過ちを繰り返すことはなかったのではないか?

 

と思いました。

 

彼らが起こしてしまった罪は決して許されることではないし、それを償うことは人として当然です。

 

しかし、それを償った後に何をすればいいのかもわからないまま時間だけが過ぎてしまい、結果的に社会へ適応することができず、同じ罪を犯してしまうことは仕方がないことなのでしょうか。

若くして刑務所に入ってしまったら、一人の人間として自立して生きていけず、犯罪を繰り返してしまうことを「教育を受けていないから」という理由で片付けてしまっていいのでしょうか。

 

たった一人でも変わるきっかけになればいい

 

暗い過去を感じさせないほどのこんなにも明るい国で、平均年齢が24歳という勢いのある今、僕は刑務所で過ごすカンボジア人の若者に、社会とつながりを持って仕事をすることの楽しさを知ってもらうきっかけが必要だと感じました。

彼らはきっと学ぶことの楽しさ、汗水垂らして働いて得られる報酬のありがたさ、自分の人生を自分らしく生きることの尊さを知ることができたら、何度も何度も同じ過ちを繰り返すことはなくなると思います。

 

そこで僕は、刑務所内でカンボジア人向けに日本語教室を行いたいと思っています。

これが正しいのか正しくないのか?やるべきなのかやるべきでないのかはわかりません。むしろ、できるのかもわかりません。

たとえ日本語教育が求められなかったとしても、今刑務所内で職業訓練が行われていないのであれば、これを発案して動き始めることによって、今後職業訓練の布石につながったり、何かが変わるかもしれません。

最初から大きなことはできないし、自分にできないことはできません。再犯率を0%にすることは僕にはできないけれど、たった一人の変われるきっかけや環境を作ることならできるかもしれません。

求められなければ、僕がやることはただの点で終わってしまうかもしれませんが、この布石はいつか点と点でつながると思っています。

 

もしかしたら、ここがカンボジアであるため、日本人である僕がやることではないのかもしれません。中にはこれを僕のエゴや偽善だという人もいるかもしれません。

しかし、きっかけとご縁があって、カンボジアの刑務所内の事実を知った今、これまでカンボジアで教育に関わる活動をしてきた僕にとって、これは見逃すことができませんでした。

 

経験の少ない僕に知恵を貸してください。

犯罪を繰り返し、刑務所に何度も戻ってくるカンボジア人の若者を更生させるために、実用性のあるスキルを身につける職業訓練の実施について、どう思いますか?

もし何かアイディアやご意見がある方は、フェイスブックのコメントやメッセージ等でご教示いただけますと幸いです。

 

 

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